鬼怒川を抜け、日光に差し掛かる頃には、街の匂いがしてきて幻滅する。
陽はすっかり暮れていたけど、インターに入る気にはならず、そのまま下道をひた走る。
この街道の入り口は少しわかりにくい。
でも、帰省のたびに走っているからわかる。
スタンドが目印だ。
そこから路地に入って、右に左に角を曲がり、程なく並木道に入る。
樹齢400年クラスの太く高い杉の木が、道に沿って連なっている。幅員が狭いくせに、木が高いから、やけに遠近感を感じる。
雲が切れ、大きな月が、ぽっかりと闇を切り抜いていた。
道も幹も青白く照らされ始める。
腐海の底みたいだなといつも思う。
僕にはそういう風に見えている。
走ってる時に何を想像しようがその人の勝手だ。
ここを抜けたら旅は終わり。
その先は単なる移動と言っていい。
対向車線の彼方に車のライトがぽつんと見えた。
猫バスかもしれない。
10月カレンダーは日光杉並木街道。
秋の夜長をお楽しみください。