
2年ぶりに福岡でライブプリンティングをすることになりました。
僕がシルクスクリーンを使い、お客さんの目の前でTシャツを制作するイベントを始めたのは、白黒ブランド設立からすぐの、10年くらい前のこと。
当時、イベントでTシャツにプリントしている人は、日本にはほとんどいなくて(僕が知る限り)、お客さんも珍しがっていた。本当の狙いは、オリジナルで作った国産Tシャツの質感を実際に見て欲しくて、プリントはそのための客寄せに過ぎなかったのだけど、予想外にウケてびっくりした記憶。

2013年頃。某バイクイベントで。恐ろしい光景です。笑
きっと、目の前でTシャツが刷り上がっていくのを目の当たりにする面白さがあるんだと思う。その後、缶スプレーアーティストなんかがよくやる「ライブペイント」に因んで、「ライブプリント(プリンティング)」という名前をつけて、いろんな場所でやらせていただいた。
そうしているうちに、アウトドアブームなんかもあって、徐々に、そういったイベント会場で見かけるようになった感じ。
これ、実は僕が先駆けだったんじゃないかとひっそり思ってます。
職人さんが工場で黙々とやっているようなものを、パフォーマンス的に披露したというのが良かったのだと思う。誰もが一枚は持っているグラフィックTシャツが、実際に作られているところを見る機会はほぼないし、だからこそ受けたのかな。
そして調子に乗った僕は、最初は単色だったのが、多色刷りや重ね刷りなどもするようになって、グラデーションに行き着いた。
シルクスクリーンによるグラデーションプリントは、割とメジャーな手法ではあるのだけど、基本は3色くらいで、大雑把な感じ。グラデはその幅や混ざり合う部分のカラーコントロールが難しく、意図して制作するのは経験と技術が必要。だから、工場ではまずやってくれないし、量産はもっと難しい。
さらに緻密で計算されたグラデーションはもっと難しくて、僕も相当試行錯誤して今の技術を編み出した。そんな緻密なら、転写やインクジェットプリントでいいじゃんと思われるでしょう。
でも、それらは仕上がりや着心地はシルクスクリーンに遠く及ばないのです。
転写は表面がテカテカして硬くなって、通気性もなくなっちゃうから、せっかくの国産Tシャツも台無しになる。そのうちヒビ割れてくるしね。
インクジェットは通気性は確保されるけれど、発色が悪くシルクスクリーンに比べて色も薄い。また、洗濯を重ねていくと見る間に褪色していく。
毎年毎年、新たなマシンやインクがTシャツプリンター機器メーカーから発表されているのだけど、発色と耐久性においては、シルクスクリーンプリントを未だに超えられていない。シルクスクリーンなんて、1900年頃に開発された古代技術なのにね。アナログでシンプルなものほど、奥が深く、人のセンスや技術が入り込む余地があるということです。
今回の福岡イベントではそんなグラデーション技術をさらに昇華させたものを披露したいと思います。道具やインク、刷り方においてもグラデーション用に特化させた、究極のグラデになります。製作中も、そして完成したものも、しばらく見入ってしまうので、「スカイ・グラデ」と名付けました。
カスタムオーダーは、その緻密さから、対面でないと難しいので、今回のライブプリンティングは貴重な機会。時間的に5名様分の枠しか作れませんでしたが、ぜひご予約ください。予約できた方は、開催日までに自分の好きなカラーや空模様を考えといてくださいね!