アーティストの本性

今にはじまったことではなく、物心ついた時からものいじりが好きだった。

好きというより、もはや病的な勢いで、いじり倒していた。

子どもの頃は”いじり”が過ぎて、ほとんどのモノがバラバラになったまま、もとに戻ることはなかった。

いわゆる壊し屋。

それが最近になって、ようやく壊れないようになった。

これは、元は、とあるメーカーのアルミ鋳造のテールランプ。

beforeを撮り忘れてしまったけど、もはや原型のデザインは全くとどめていない。

バラバラに分解した後に、思うまま、感じるままに、余計な装飾を削り落とし、貼り付け、磨きあげた。

気づいたら夜になっていて、飲まず食わずの一日。

作るだけ作って、完成したら、もう飽きてしまう。

同じものを、また作る気には到底ならない。

残るのは、世にないものを創り出したという満足感だけ。

日光の杉並木

鬼怒川を抜け、日光に差し掛かる頃には、街の匂いがしてきて幻滅する。

陽はすっかり暮れていたけど、インターに入る気にはならず、そのまま下道をひた走る。

この街道の入り口は少しわかりにくい。
でも、帰省のたびに走っているからわかる。

スタンドが目印だ。
そこから路地に入って、右に左に角を曲がり、程なく並木道に入る。

樹齢400年クラスの太く高い杉の木が、道に沿って連なっている。幅員が狭いくせに、木が高いから、やけに遠近感を感じる。

雲が切れ、大きな月が、ぽっかりと闇を切り抜いていた。
道も幹も青白く照らされ始める。

腐海の底みたいだなといつも思う。
僕にはそういう風に見えている。
走ってる時に何を想像しようがその人の勝手だ。

ここを抜けたら旅は終わり。
その先は単なる移動と言っていい。

対向車線の彼方に車のライトがぽつんと見えた。

猫バスかもしれない。

10月カレンダーは日光杉並木街道。
秋の夜長をお楽しみください。

染色×シルクスクリーンが美しすぎた

染色とシルクスクリーンふたつの技法を組み合わせたコレクションです。

生地の水分量、染色の時間や深さ、洗い上げるタイミングを調整しながらボディ自体を染めたあとに、シルクスクリーンプリントでゴーグル部分を刷り上げました。

ゴーグルにも染料のカラーに近づけたインクを調色、グラデーションプリントを施し、”染め”と”刷り”の両方でグラデーション技法を使った稀有なコレクションとなります。

決して大量生産品では実現できない一点物、あなただけのMOTO-ARTをお楽しみください。

感動とかそういうんじゃない

一度だけ、風景に涙を流したことがある。

20代の夏。

北の大地。

夕暮れ時。

オレンジに染まる海や空や山々。

筆舌に尽くしがたい見事な夕景ではあったけど、北の地を走っていればよくある風景で、その時は、宿のチェックインが迫っていて、少し急いでいた。

ふと、遠くから名前を呼ばれた気がして、アクセルを緩めた。

風切り音だったかもしれないけど、なんだか母親の声に似ていたように思えて、エンジンを切り、耳を傾けた。

一台のトラックが過ぎ去り、やがて何も聞こえなくなった。

風の音も、鳥の声も、なにも聞こえない。
静寂というより、無音。

自分のブーツが地面に擦れる音だけが聞こえていた。

海を見ると、太陽がちょうど沈む間際で、最後の光がどんどん小さくなって、点になって、水平線に消えるところだった。

その瞬間に涙が溢れた。
感動とかいった類のものではない。

今でも説明がつかないし、あの時以来それはない。

来月はそんな記憶の風景。

夏です。

センスって

センスはどうやったら身につくの?と聞かれる事が多いのだけど、僕にも分からないし、そもそも自分自身にセンスがあるとも思ってない。

好きなことを好きなようにやってるだけだし。

ただ、かっこいいな、美しいなと感じた時に、なんでそう感じたのか、何をどうするとそうなるのかを考える癖は昔からあったと思う。

美しいものは真似したいもの。

美しいと思う感覚こそがセンスとか言われるとどうしようもないけど、その感覚が全くない人なんているんだろうか。

みな、何かしらの美的感覚があるはずで、それをうまく自己表現できた時に”センスがある”となるのかなあ。

いや、たまに、とんでもない表現になってしまってる人もいて、度を超えると、奇抜な、とか、個性的とか言われるようになる。

というわけで、広辞苑を引いてみる。

センスとは物事の微妙な違いや味わいを感じとる力。物事を分別する力。良識。正常な感覚。

つまり、一般の人々に受け入れられやすい形で、自己表現ができる人のことをセンスがあるということかな?

うーん。

そんなセンス欲しいですか?

Rain or Shine 2022 開催決定!

「白いTシャツと黒いバイク。」正規取扱店のMotorimoda、また高知蔦屋の協力の元開催が決定しました。

2年ぶりの開催となる今回は、銀座からスタートし、神戸、高知、福岡をモーターサイクルで走破し、各地で開催するライブプリンティングツアーとなります。

老舗Tシャツメーカーの「久米繊維」と3年の歳月を費やし完成させた、オリジナルの純国産Tシャツに「白いTシャツと黒いバイク。」の代表であり、アーティストのワタナベキイチが、皆様の前で一枚一枚手刷りで仕上げていきます。

真っ白なTシャツに命が吹き込まれていく様を生で見られる貴重な機会です。シルクスクリーンプリントという版画法の一種を駆使して仕上げていきますが、プリントにはいくつかの工程があり、仕上がるまでに約30〜40分を要しますが、待っている時間も気にならないほど飽きません。

是非、貴方らしい、世界に1枚のとっておきをオーダーしてみてください。

■ 開催日時・店舗

・4月29日(金)
13:00-18:00(17:00 LO)
Motorimoda 銀座店
@motorimoda
東京都中央区銀座8-16-6-1F
03-6226-2515

・5月1日(日)
13:00-18:00(17:00 LO)
Motorimoda 神戸店
@motorimoda.kobe
兵庫県神戸市灘区鹿ノ下通 2-4-20
078-871-8567

・5月3日(火)・4日(水)
11:00-19:00(18:00 LO)
高知蔦屋書店
@kochi_tsutayabooks
高知県高知市南御座6-10
088-882-5544

・5月7日(土)
13:00-18:00(17:00 LO)
Motorimoda 福岡店
@motorimodafukuoka
福岡県筑紫野市原田 6-5-10
092-926-8862

■ 価格
¥8,800(税別)
半袖・白生地のみ
サイズ:XS,S,M,L,XL

■ インクカラー
プリントカラーは黒インクをベースにいくつかのカラーをご用意します。

■ カスタマイズ
プリントサイズを変えることはできませんが、プリントする場所やアレンジは可能な限り対応いたします。

■ワークショップ開催
高知蔦屋イベントでは1日目の5月3日(火)に、シルクスクリーンプリンティングのワークショップを30名様限定(要予約)で開催します。
自分の好きな絵を描き、その絵をもとにシルクスクリーン版を作り、お持ちいただいたTシャツやトートバッグ等好きなものにプリントできるプレミアムなワークショップです。もちろん完成した版はお持ち帰りいただけます。
※予約フォームは近日中に公開いたします。

放置するといい

モーターサイクルのそれと同じように、デザインも、いきなり取りかからずに、しばらくほったらかしにする。

放置してる間は、いつも見えるところ、手に取れるところにおいておく。

朝、起きがけのぼんやりした頭で見たり、夜の照明に照らされたり、お酒を飲みながらだったり、仕事の合間だったり、様々なシチュエーションで見ることになる。

そのうちになんとなく最善のカタチがみえてくる。

カタチが見えたら、ひたすら作業。

焦って、それが見えないうちに始めると、失敗することが多い。

完成したものや、実製作の過程を評価されることは多いけれど、この放置期間のイメージングやアイデアが、クリエイティブにはとても大切なのです。

ただ、カタチが見えてくるのが、スケジュールギリギリになることが多いのは何故でしょう。