
今回の個展でのメインとなっている3つの作品についての解説です。
真ん中のライブドローイング作品が目立つので、その両隣の子達が脇役っぽくなってしまっていますが、実はこの作品は3つでひとつのストーリーになっています。
見てわかる通りこの絵は「歌う前」・「歌ってる最中」・「歌い終わったあと」の3つで構成されています。それぞれに込めたテーマは「生」・「動」・「死」で、レース用エンジンの儚くも美しい一生を描いた作品になります。
レース用エンジン?と思うかもしれませんね。これは私が子供の頃、レース用のエンジンは一回使い切りと聞いた時に、なんだかとても悲しい(かわいそう?)気持ちになったことが由来です。今はどうかはわかりませんが、これはレースという戦いのためだけに生まれてきたエンジンの物語でもあります。

生:覚悟が決まる瞬間の緊張感を表現。アイドリング中のエンジンや空ぶかしの雰囲気を白い息に込めました。
動:歌い始めるや否や、エンジンやマフラーが飛び出し、この子が人間ではないことがわかります。その振動やエキゾーストはマイクや空間を歪めていきます。エンジンのモデルとしてHONDAのワークスマシンであるNSR500のエンジン(NV0A)をモチーフにしました。本来はV型4気筒エンジンですが、この絵ではこれを2連にして8気筒にしています。
死:それを「死」とすると語弊があるのかもしれませんが、やはり私にとってはそれがテーマになっています。彼女の音圧でマイクはひしゃげ、壊れ、そして着ていた服もボロボロです。太ももに流れる液体はエンジンオイルですが、血液にも見えるようにしてます。当初は、顔も描いていたのですが、あまりに悲しい感じの絵になってしまったため、エンジンパーツに変えました。
私が表現したかったのは、決して悲しい物語ではなく、与えられた役(運命)を全力で全うし、満足して散っていく姿、美しい生き方・死に方を描きたかった。エンジンに例えていますが、これはもちろん私たち人間の生き方に重ねています。才能や運も含めてその人にしかできないことを「役目」だとするならば、その役を全うすることが、最も幸せで美しい生き方ではないかなと思います。まあ、その役を見つけるまでが大変なのですが。

ボツにした3つ目のイラスト(頭部)をここに置いておきます。死に際の微笑み。やっぱりこっちにしておけばよかったかも?笑
ボツのイラストバージョンも見てみたくなります🎵
なんとー!
ありがとうございます。